沖縄:日本の“南国”に息づく養生の知恵
「南国料理」で暑さを乗り切る、と聞くと、タイやベトナムなど東南アジアを思い浮かべる方が多いかもしれません。実は、日本にも“南国”があります――それが沖縄です。
沖縄は一年を通して温暖で、夏は特に蒸し暑く、亜熱帯に近い気候。そんな環境のなかで育まれてきた沖縄料理は、日本料理・中国料理・琉球・東南アジアの要素を融合しながら、体を温める「温補」と、さっぱりとした「清涼感」のバランスを特に大切にしているのも特徴です。
沖縄の人々は、ただ冷たいものを食べて暑さを抑えるのではなく、体の内側の力で自然に調整するという考え方です。卵や里芋といった温める食材を好んで使い、脾の陽気を養って消化の働きを高めます。また、苦瓜のような「苦味が心に入る」とされる食材を用いる事は、心の火を鎮めつつ脾胃を傷めず、暑さの中でも頭をすっきりと保ち、心を穏やかに整える効果があります。
特に注目すべきなのは、沖縄の人々が「冷たいものをひたすら食べて熱を下げる」ことを良しとせず、汗や代謝の力をうまく活かして湿気を追い出し、暑さを和らげるという考え方を実践している点です。
たとえば、豆腐よう(発酵させた豆腐)や昆布、海ぶどうなどミネラル豊富な食材を、酸味や塩味を効かせた調味で食べることで、食欲を刺激し、水分代謝を促進。さらに、肝腎を補い、五臓を養う効果もあります。
沖縄料理の知恵はまさに、中医学が大切にする「夏は陽気を養い、湿気から脾を守る」という養生の考え方と、自然に重なっているということです。そして何より、日本人にとって沖縄の食材や調理法は馴染み深く、無理なく取り入れられるのも魅力です。この夏を、少し気分を変えて“沖縄バカンス”のように過ごしてみるのもいいかもしれません。一皿のゴーヤーチャンプルーと、さっぱりとした海藻サラダで、暑さの中でも身体を軽やかに、そして内側から元気に整えましょう。
ゴーヤーチャンプルー

適した体質:湿熱体質/肥満気味/イライラしやすい/眠りが浅い方
分量:2人分
材料:
- 苦瓜 1/2本
- 木綿豆腐 1丁
- 卵 1個
- ランチョンミートまたは豚肉 適量
- 塩・醤油・植物油 適量
作り方:
- 苦瓜はワタを除いて薄切りにし、塩でもんで苦味をやわらげる。
- 豆腐は水切りし、表面が香ばしくなるまで焼いて取り出す。
- 肉を炒め、苦瓜を加えて火が通ったら、豆腐を戻して全体を炒め合わせ、最後に卵を流し入れて炒めて完成。
養生ポイント:
苦瓜は体の熱を冷まして血糖値の調整を助け、豆腐は体を潤しながら穏やかに栄養を補い、卵は心を落ち着かせてくれるため、暑さでイライラしやすい夏におすすめの一品です。
昆布と豚骨のスープ

適した体質:気虚体質/顔色が悪い/汗をかきやすく疲れやすい
分量:3〜4人分
材料:
- 豚骨 300g
- 昆布 10g
- 大根 1/2本
- 生姜 2枚
- 塩 適量
- 料理酒 適量
作り方:
- 豚骨は下ゆでしてアクを取り、昆布・大根・生姜とともに煮込み、1時間ほどコトコト煮る。
- 仕上げに塩・料理酒で味を調える。
養生ポイント:
昆布はヨウ素を補って脂質代謝を助け、豚骨はカルシウムで筋肉や骨を強くし、生姜は体を温めて湿気を取り除いてくれるため、体力が落ちやすく脾が弱い方の湿気対策や回復におすすめです。
紫芋のおにぎり

適した体質:陽虚/冷え性/胃腸が弱い/食欲不振になりやすい方
分量:2人分
材料:
- 紫芋 100g
- 炊きたてご飯 1合
- 白ごま・塩 少々
作り方:
- 紫芋は蒸して潰し、塩で軽く味をつける。
- ご飯に混ぜて温かいうちに握り、白ごまをふる。
養生ポイント:
紫芋は天然の抗酸化力に優れ、気や血を補いながら体にこもる熱を抑え、腸を整えて血糖値や脳の働きにも良いため、夏にやさしく元気を補いたいときにぴったりの食材です。
沖縄風 海藻サラダ

適した体質:湿熱が上にこもりやすく、ニキビが出やすい、口が苦く感じる、胸が重くてだるさを感じやすい方
分量:2人分
材料:
- 乾燥わかめ
- 海ぶどう
- きゅうり
- トマト
ドレッシング:
- 酢 大さじ1
- 練りごま 大さじ1
- 醤油・塩 少々
- 白ごま 適量
作り方:
- 海藻は戻して水気を切る。
- 野菜はスライスし、調味料を混ぜたドレッシングで全体を和える。
養生ポイント:
海藻はカリウムやヨウ素を豊富に含み、体内の湿気を排出し、腸を潤して暑さに負けない体をつくる助けとなるため、沖縄の人々が清涼感のある体質を保つための小さな秘訣となっています。